
日本の部屋を訪ねる vol.01 東京
あとから決めた灯り 東京の二階建て
海外の部屋の写真を、何年も集めていたそうです。切り抜きと保存した画像を一冊にまとめて、それを持って打ち合わせに通った。できあがった家は、日本の建売とそう変わらない骨格をしています。それでも夜になると、まるで別の家になる。九月のはじめ、共働きのふたりが暮らす東京郊外の二階建てを訪ねました。

天井は人が来たときだけ
夜の九時。居間で点いているのは、壁のあかりだけでした。天井にも器具は付いていますが、ふだんは使わないそうです。「人が来たときだけ点けます」と、ご主人はこともなげに言いました。 金色の籠から漏れた光が、壁と天井に細い影を放射状に広げています。部屋の隅は暗いまま。日本の家の感覚だと、もう一つ灯りを足したくなる明るさです。けれど本を読むぶんには足りていて、実際その明るさで本を読んでいました。 「この位置は、図面のときに決めました」。壁の中に電線を通しておかないと、あとからは付けられない。だから間取りの打ち合わせが終わって、電気の打ち合わせという日が来たときに、集めていた写真を広げて「ここに欲しい」と頼んだのだそうです。「照明の話が出てくるのが、思っていたよりずっと後でした。壁紙も床も、もう決まっていた」

器具は引き渡しのあとで
食卓の上には、木とガラスのペンダントが二つ。テーブルの面から、思ったより低いところに下がっています。「座ったときに、電球が目に入らない高さにしました」 面白いのは、この器具が家の工事に入っていないことです。天井には丸い受け口だけを付けてもらって、引き渡しのあとで自分たちで買った。「打ち合わせで決めたのは、器具じゃなくて受け口です」と奥さん。差して回すだけなので、工事の人を呼ばずに自分で付けられたそうです。 「最初に工務店さんに聞きました。器具はこちらで買ってもいいですかって。いいですよ、ただ早めに言ってくださいと」。図面に線が入ってからだと、重さや付け方で断られることがある。言うのが早いほど選べる幅が広い、というのは、この家で聞いたなかでいちばん実用的な話でした。奥の台所の手元灯だけは工事に入れてもらっています。そこは毎日使うから、と。

ここだけは譲らなかった
二階の寝室。壁はくすんだ青に塗ってあります。枕元の壁に、金色のアームが一本。透明なガラスの傘なので光がほとんど遮られず、壁の色ごと浮かび上がります。 「寝室の灯りを、天井にしたくなかった」。横になったときに、光が真上から顔に来るのが苦手なのだそうです。ここは器具そのものを壁につなぐ形なので、電気工事の人にお願いするしかありません。つまり、あとから気が変わっても足せない灯りです。 「どこを工事に入れて、どこを自分でやるか。それを分ける作業でした」。天井の受け口だけ頼んで器具は自分で選ぶところと、壁に埋めてしまうところ。この家の打ち合わせは、器具を選ぶ会ではなく、その線を引く会だったのだと思います。夜のあいだ、この家で点いているのは壁のあかりが二つと、台所の手元がひとつ。それだけでした。
この光のつくり方
- 天井
- 一台で部屋を照らしきらない。壁に一つ足すだけで、天井を消したまま過ごせる夜が増える。
- 高さ
- 食卓の器具は、座ったときに電球が目に入らないところまで下ろす。低いほど、その一角が部屋から独立する。
- 光の色
- 電球色。壁の色と木と人の肌のための色。白い光にすると、同じ部屋が事務所になる。
- 決める順番
- 新築では、器具の名前より先に、天井に何を残すか。受け口を頼んでおけば、器具は住んでからゆっくり選べる。
天井の受け口(引掛シーリング)が付いていれば、ペンダントもシーリングライトも差して回すだけで付きます。工事はいりません。壁付けのブラケットや、配線を直接つなぐ器具は電気工事士の資格が要るので、工務店か内装業者、または電気工事店にお願いしてください。器具を自分で買って取り付けだけ頼む場合(施主支給)は、電気の打ち合わせより前に相談しておくと話が早いです。
この部屋の照明
NN-BRA-01
LEDブラケットライト E26 電球色
全光束 810lm/色温度 電球色2700K/寸法 本体 :直径120×高さ217mm ベース :直径90×高さ40mm/質量 0.26kg/口金 E26
価格 準備中
NN-PEN-01
LEDペンダントライト 木とガラス E17 電球色
消費電力 60Wまで×1(電球別売り)/色温度 電球色 2700K/寸法 約φ147×H1270mm(最大・長さ調節可能)/質量 0.66kg/口金 E17/電源 AC100V 50/60Hz
価格 準備中
NN-BRA-02
LEDブラケットライト E26 調光調色
全光束 810lm/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/寸法 本体:幅279×奥行150×高さ258mm ベース:直径90×高さ…/質量 0.44kg/口金 E26
価格 準備中
編集後記
この家を出てから、自分の部屋の天井を三日ほど消して過ごしてみました。壁のあかりひとつで足りる夜と、足りない夜がある。足りない夜は、本を閉じる合図だと思うことにしています。次は、マンションを買って中を作り直した家を訪ねる予定です。天井に穴を開けられない家では、灯りの決め方がまた変わるはずです。
文・写真=照明堂 編集部
発行=日本ネオン株式会社 2026年09月10日 掲載
この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。



