東京郊外の新しい二階建ての居間、夜。壁に金色の針金を編んだ籠のブラケットが一灯。細い影が壁と天井へ放射状に広がる。濃紺のスウェットでソファに沈んで本を読む夫、テーブルに海外のインテリア雑誌

日本の部屋を訪ねる vol.01 東京

あとから決めた灯り 東京の二階建て

海外の部屋の写真を、何年も集めていたそうです。切り抜きと保存した画像を一冊にまとめて、それを持って打ち合わせに通った。できあがった家は、日本の建売とそう変わらない骨格をしています。それでも夜になると、まるで別の家になる。九月のはじめ、共働きのふたりが暮らす東京郊外の二階建てを訪ねました。

東京郊外の新しい二階建ての居間、夜。壁に金色の針金を編んだ籠のブラケットが一灯。細い影が壁と天井へ放射状に広がる。濃紺のスウェットでソファに沈んで本を読む夫、テーブルに海外のインテリア雑誌

天井は人が来たときだけ

夜の九時。居間で点いているのは、壁のあかりだけでした。天井にも器具は付いていますが、ふだんは使わないそうです。「人が来たときだけ点けます」と、ご主人はこともなげに言いました。 金色の籠から漏れた光が、壁と天井に細い影を放射状に広げています。部屋の隅は暗いまま。日本の家の感覚だと、もう一つ灯りを足したくなる明るさです。けれど本を読むぶんには足りていて、実際その明るさで本を読んでいました。 「この位置は、図面のときに決めました」。壁の中に電線を通しておかないと、あとからは付けられない。だから間取りの打ち合わせが終わって、電気の打ち合わせという日が来たときに、集めていた写真を広げて「ここに欲しい」と頼んだのだそうです。「照明の話が出てくるのが、思っていたよりずっと後でした。壁紙も床も、もう決まっていた」

この照明 ▸ LEDブラケットライト E26 電球色

同じ家の食卓。木とガラスのペンダントが二灯、天板から手の届く低さに並ぶ。生成のリネンのシャツで髪を束ねた妻がマグカップを包んで雑誌を見る横顔、葡萄の器と切り抜きを貼ったノート

器具は引き渡しのあとで

食卓の上には、木とガラスのペンダントが二つ。テーブルの面から、思ったより低いところに下がっています。「座ったときに、電球が目に入らない高さにしました」 面白いのは、この器具が家の工事に入っていないことです。天井には丸い受け口だけを付けてもらって、引き渡しのあとで自分たちで買った。「打ち合わせで決めたのは、器具じゃなくて受け口です」と奥さん。差して回すだけなので、工事の人を呼ばずに自分で付けられたそうです。 「最初に工務店さんに聞きました。器具はこちらで買ってもいいですかって。いいですよ、ただ早めに言ってくださいと」。図面に線が入ってからだと、重さや付け方で断られることがある。言うのが早いほど選べる幅が広い、というのは、この家で聞いたなかでいちばん実用的な話でした。奥の台所の手元灯だけは工事に入れてもらっています。そこは毎日使うから、と。

この照明 ▸ LEDペンダントライト 木とガラス E17 電球色

同じ家の二階の寝室。くすんだ青に塗った枕元の壁に、金色のアームと透明ガラスの丸い傘のブラケットが一灯。白いリネンのダブルベッド、ナイトテーブルに伏せた本と水のグラス、壁のフックにガウン

ここだけは譲らなかった

二階の寝室。壁はくすんだ青に塗ってあります。枕元の壁に、金色のアームが一本。透明なガラスの傘なので光がほとんど遮られず、壁の色ごと浮かび上がります。 「寝室の灯りを、天井にしたくなかった」。横になったときに、光が真上から顔に来るのが苦手なのだそうです。ここは器具そのものを壁につなぐ形なので、電気工事の人にお願いするしかありません。つまり、あとから気が変わっても足せない灯りです。 「どこを工事に入れて、どこを自分でやるか。それを分ける作業でした」。天井の受け口だけ頼んで器具は自分で選ぶところと、壁に埋めてしまうところ。この家の打ち合わせは、器具を選ぶ会ではなく、その線を引く会だったのだと思います。夜のあいだ、この家で点いているのは壁のあかりが二つと、台所の手元がひとつ。それだけでした。

この照明 ▸ LEDブラケットライト E26 調光調色

この光のつくり方

天井
一台で部屋を照らしきらない。壁に一つ足すだけで、天井を消したまま過ごせる夜が増える。
高さ
食卓の器具は、座ったときに電球が目に入らないところまで下ろす。低いほど、その一角が部屋から独立する。
光の色
電球色。壁の色と木と人の肌のための色。白い光にすると、同じ部屋が事務所になる。
決める順番
新築では、器具の名前より先に、天井に何を残すか。受け口を頼んでおけば、器具は住んでからゆっくり選べる。

天井の受け口(引掛シーリング)が付いていれば、ペンダントもシーリングライトも差して回すだけで付きます。工事はいりません。壁付けのブラケットや、配線を直接つなぐ器具は電気工事士の資格が要るので、工務店か内装業者、または電気工事店にお願いしてください。器具を自分で買って取り付けだけ頼む場合(施主支給)は、電気の打ち合わせより前に相談しておくと話が早いです。

この部屋の照明

LEDブラケットライト E26 電球色

NN-BRA-01

LEDブラケットライト E26 電球色

全光束 810lm/色温度 電球色2700K/寸法 本体 :直径120×高さ217mm ベース :直径90×高さ40mm/質量 0.26kg/口金 E26

ゴールド器具のみ・電球・リモコン付属なし40W形相当・電球色LED付(リモコン対応不可)60W形相当・電球色LED付(リモコン対応不可)

価格 準備中

LEDペンダントライト 木とガラス E17 電球色

NN-PEN-01

LEDペンダントライト 木とガラス E17 電球色

消費電力 60Wまで×1(電球別売り)/色温度 電球色 2700K/寸法 約φ147×H1270mm(最大・長さ調節可能)/質量 0.66kg/口金 E17/電源 AC100V 50/60Hz

ナチュラルブラウン器具のみ電球色C35LED付(リモコン非対応)

価格 準備中

LEDブラケットライト E26 調光調色

NN-BRA-02

LEDブラケットライト E26 調光調色

全光束 810lm/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/寸法 本体:幅279×奥行150×高さ258mm ベース:直径90×高さ…/質量 0.44kg/口金 E26

ゴールド器具のみ・電球・リモコン付属なしA60丸型クリア電球・リモコン付ST64細長型クリア電球・リモコン付

価格 準備中

編集後記

この家を出てから、自分の部屋の天井を三日ほど消して過ごしてみました。壁のあかりひとつで足りる夜と、足りない夜がある。足りない夜は、本を閉じる合図だと思うことにしています。次は、マンションを買って中を作り直した家を訪ねる予定です。天井に穴を開けられない家では、灯りの決め方がまた変わるはずです。

文・写真=照明堂 編集部

発行=日本ネオン株式会社 2026年09月10日 掲載

この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。

ほかの部屋

築五十年の木造を買って直した家の食卓。天井を一部だけ抜いて出した黒い梁から、金属のソケットの裸電球が三灯、長さを変えて下がる。藍色の上着の妻が湯呑みを包んで湯気を見ている、藍染めのランナーに急須

日本の部屋を訪ねる vol.03 東京・築五十年

梁から三つ下げた 天井の低い家の灯り

駅から歩いて十五分、細い道の奥にある築五十年の木造二階建て。買ったときは天井が低く、部屋が細かく仕切られていたそうです。壁を何枚か抜いて、居間と食卓をつなげた。天井も一部だけ抜いて、黒く古びた梁を出しました。灯りの話は、その梁が見えたところから始まったと言います。

郊外に建てた平屋の勾配天井の下の食卓。濃い緑のガラスの波形の傘のペンダントが二灯、同じ高さに並ぶ。えんじ色のセーターの妻がマグカップを持って窓の外を見ている横顔、葡萄の器と開いた雑誌

日本の部屋を訪ねる vol.04 郊外・平屋

まっすぐには下ろせなかった 屋根なりの天井の平屋

屋根の形が、そのまま天井になっている家です。二階がないぶん、勾配の低いところと高いところが、ひとつの部屋の中に同居している。打ち合わせで最初に言われたのは、この天井にはそのままでは吊り下げが付きませんという一言だったそうです。九月の夕方、郊外に建てた平屋を訪ねました。

都心の狭い土地に建てた築三年の三階建ての吹き抜け。二階の廊下の高さに、金属のソケットの裸電球が長い布巻きコードで下がる。灰青色のワンピースの妻が手すりから身を乗り出して一階をのぞき込む

日本の部屋を訪ねる vol.06 都心・狭小の三階建て

手の届く高さまで下ろした 狭い土地の三階建て

土地の幅が四メートルないそうです。横に広げられないぶん、上に伸ばした三階建て。一階から三階までを細い吹き抜けが貫いていて、その脇を階段が上がっていきます。廊下と呼べる場所は、この家にはありません。階段がそのまま廊下でした。九月の夜、都心の狭い土地に建った家を訪ねました。

築二十年の中古マンションの八階の食卓。天井のただひとつの受け口から、白い針金の籠の傘のペンダントが一灯下がり、影が天井いっぱいに広がる。画面の端に肩から上だけ写るニット姿の夫、急須と無花果の器

日本の部屋を訪ねる vol.02 東京・マンション

受け口はひとつだけだった 作り直した八階の部屋

築二十年の中古マンションを買って、中を全部作り直した部屋です。八階の南向き。図面を引いてもらう前に言われたのは、この天井にはダウンライトが入りませんという一言でした。そこから先の決め方が、前の号の注文住宅とはまるで違っていました。九月の夕方に訪ねました。