築五十年の木造を買って直した家の食卓。天井を一部だけ抜いて出した黒い梁から、金属のソケットの裸電球が三灯、長さを変えて下がる。藍色の上着の妻が湯呑みを包んで湯気を見ている、藍染めのランナーに急須

日本の部屋を訪ねる vol.03 東京・築五十年

梁から三つ下げた 天井の低い家の灯り

駅から歩いて十五分、細い道の奥にある築五十年の木造二階建て。買ったときは天井が低く、部屋が細かく仕切られていたそうです。壁を何枚か抜いて、居間と食卓をつなげた。天井も一部だけ抜いて、黒く古びた梁を出しました。灯りの話は、その梁が見えたところから始まったと言います。

築五十年の木造を買って直した家の食卓。天井を一部だけ抜いて出した黒い梁から、金属のソケットの裸電球が三灯、長さを変えて下がる。藍色の上着の妻が湯呑みを包んで湯気を見ている、藍染めのランナーに急須

吊るせる場所はここだけ

天井を抜いた部分だけ、頭の上が高くなっています。ほかの部屋は床から二メートル二十くらい。手を伸ばせば天井に触れます。「吊るす照明は諦めていました。頭にぶつかるので」 変わったのは梁が出てからです。抜いた部分の上だけ空間ができて、そこにテーブルを置いた。梁から下げれば、電球の位置は目より上に来ます。「食卓の上だけは、吊るしていいことになった」 下がっているのは、傘のない裸のソケットが三つ。長さを少しずつ変えてあります。傘がないぶん光は上にも回って、梁と天井を照らしていました。「傘のある器具も見たんですけど、この梁を隠したくなかった」。買ってきた器具を自分で梁に留めたのかと聞くと、そこは違うと言われました。「コードを梁に沿わせて、天井の中まで通してもらっています。そこは工事です」

この照明 ▸ LEDソケット照明 E26

同じ家の一階の廊下。壁の中ほどに黒い針金を花びらのように編んだ傘のブラケットが一灯、花の形の影が白い壁いっぱいに落ちる。奥の引き戸に手をかけた夫は逆光で輪郭だけ、飾り棚に器と一輪挿し

低い天井は壁に逃げる

廊下の天井には、何も付いていません。「低いところに器具を付けると、余計に低く見えるんです」。代わりに壁の中ほどに一つ。黒い針金の傘から漏れた光が、花の形の影を壁いっぱいに落としていました。 古い家の工事で、いちばんお金がかかったのは灯りではなく配線だったそうです。「電気屋さんが天井裏に入って、これは全部やり直しですねと」。壁を開けている間しかできないので、器具をどこに付けるかは、その前に決めなければいけません。「間取りより先に、コンセントとスイッチと灯りの位置を聞かれました。新築の人とは順番が逆だと言われた」 ガラス障子の向こうは居間です。夜、廊下を歩くとき、この一つと、障子越しの明かりだけで足ります。天井の器具を消したままの家は、廊下がいちばん静かでした。

この照明 ▸ LEDブラケットライト E17 電球色

同じ家の玄関。天井に金色の枠と厚いガラスのマリンランプが一灯、直付けで点く。土間に革靴とパンプス、壁のフックに上着とバッグ、下駄箱の上に鍵の小皿と一輪挿し、奥の引き戸のむこうに居間の灯り

土間は下げない

玄関は土間のまま残してあります。天井は低く、ここは抜いていません。付いているのは、天井に直に留める小さなランプが一つだけ。金色の枠に厚いガラスの入った、船で使うような形のものです。 「吊るすと、頭が当たります」。それだけの理由で選んだそうです。籠の隙間から漏れた光が天井にも回って、土間から上がり框まで、靴の色が分かるくらいには見えています。帰ってきて靴を脱ぐあいだ見えていればいい場所なので、これで足りている。 この家を回って気づいたのは、天井が低いことを一度も直そうとしていないことでした。低いから吊るさない、低いから壁に付ける、低いから天井に直付ける。制約に合わせて器具の種類を変えているだけで、無理をしている場所がひとつもない。「新築の人がうらやましいと思ったことは、あんまりないです」と、笑って言われました。

この照明 ▸ LEDマリンランプ 1灯 E26

この光のつくり方

天井が低いとき
吊り下げは頭の上が高い場所だけ。それ以外は壁に付けるか、天井に直付けるかの二択になる。
梁から下げる
コードを梁に沿わせて天井の中まで通す工事が要る。梁に自分で留めるのとは別の話。
古い家の順番
中古住宅のリフォームでは、間取りより先に灯りの位置を聞かれる。壁を開けている間しか配線を直せないため。
傘のあるなし
見せたい木や壁があるなら、傘の無い器具。光が上にも回って、梁や天井が暗く残らない。

天井の受け口(引掛シーリング)に差す器具は工事がいりません。差して回すだけです。梁や天井にコードを沿わせて配線を通す場合、壁付けのブラケットを新しく付ける場合、天井に器具を直接つなぐ場合は、いずれも電気工事士の資格が要ります。古い家を直した工務店か内装業者、または電気工事店にお願いしてください。古い家では、壁や天井を開けている間しか配線を触れないことが多いので、器具の位置は工事が始まる前に相談して決めておくと手戻りがありません。

この部屋の照明

LEDソケット照明 E26

NN-PEN-02

LEDソケット照明 E26

寸法 ソケット H88×φ32mm / コード長約1m/質量 176g/口金 E26/適合電球 60Wまで/材質 アルミニウム、PC

価格 準備中

LEDブラケットライト E17 電球色

NN-BRA-03

LEDブラケットライト E17 電球色

色温度 電球色2700K/寸法 本体:幅285×奥行110×高さ200mm シェード:直径180×…/質量 0.32kg/口金 E17/適合電球 60Wまで

ブラックホワイトゴールド器具のみ・電球付属なし

価格 準備中

LEDマリンランプ 1灯 E26

NN-CEI-09

LEDマリンランプ 1灯 E26

全光束 810lm/寸法 直径13cm×高さ25cm/質量 600g/口金 E26/適合電球 E26口金 60Wまで

E26・ゴールド本体のみ(電球付属無し)60W形E26

価格 準備中

編集後記

傘の無い裸のソケットは、うちの売り場でもいちばん地味な棚にあります。写真映えしないので、これまであまり前に出していませんでした。この家を見て、見せたいものが天井にある家では、傘が邪魔になることがあると分かりました。次は、平屋を訪ねる予定です。天井の高さも、灯りの置き方も、また変わるはずです。

文・写真=照明堂 編集部

発行=日本ネオン株式会社 2026年09月10日 掲載

この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。

ほかの部屋

郊外に建てた平屋の勾配天井の下の食卓。濃い緑のガラスの波形の傘のペンダントが二灯、同じ高さに並ぶ。えんじ色のセーターの妻がマグカップを持って窓の外を見ている横顔、葡萄の器と開いた雑誌

日本の部屋を訪ねる vol.04 郊外・平屋

まっすぐには下ろせなかった 屋根なりの天井の平屋

屋根の形が、そのまま天井になっている家です。二階がないぶん、勾配の低いところと高いところが、ひとつの部屋の中に同居している。打ち合わせで最初に言われたのは、この天井にはそのままでは吊り下げが付きませんという一言だったそうです。九月の夕方、郊外に建てた平屋を訪ねました。

都心の狭い土地に建てた築三年の三階建ての吹き抜け。二階の廊下の高さに、金属のソケットの裸電球が長い布巻きコードで下がる。灰青色のワンピースの妻が手すりから身を乗り出して一階をのぞき込む

日本の部屋を訪ねる vol.06 都心・狭小の三階建て

手の届く高さまで下ろした 狭い土地の三階建て

土地の幅が四メートルないそうです。横に広げられないぶん、上に伸ばした三階建て。一階から三階までを細い吹き抜けが貫いていて、その脇を階段が上がっていきます。廊下と呼べる場所は、この家にはありません。階段がそのまま廊下でした。九月の夜、都心の狭い土地に建った家を訪ねました。

築二十年の中古マンションの八階の食卓。天井のただひとつの受け口から、白い針金の籠の傘のペンダントが一灯下がり、影が天井いっぱいに広がる。画面の端に肩から上だけ写るニット姿の夫、急須と無花果の器

日本の部屋を訪ねる vol.02 東京・マンション

受け口はひとつだけだった 作り直した八階の部屋

築二十年の中古マンションを買って、中を全部作り直した部屋です。八階の南向き。図面を引いてもらう前に言われたのは、この天井にはダウンライトが入りませんという一言でした。そこから先の決め方が、前の号の注文住宅とはまるで違っていました。九月の夕方に訪ねました。

郊外の二世帯住宅の親世帯の居間。天井に白いバーと白い円筒のスポットが四灯並び、四つとも点いている。うす茶のカーディガンの父が新聞を広げる斜め後ろ姿、低いテーブルに急須と菓子器と老眼鏡

日本の部屋を訪ねる vol.05 郊外・二世帯

四つ点ける親、二つで足りる子 ひとつ屋根の二世帯

同じ家です。玄関がひとつ、廊下がひとつ、その先で左右に分かれて、間取りも広さも同じ居間がふたつ並んでいます。設計の打ち合わせでいちばん長くもめたのは、部屋の広さでも収納でもなく、明るさだったそうです。九月の夕方、親と子が住む二世帯の家を訪ねました。