郊外の二世帯住宅の親世帯の居間。天井に白いバーと白い円筒のスポットが四灯並び、四つとも点いている。うす茶のカーディガンの父が新聞を広げる斜め後ろ姿、低いテーブルに急須と菓子器と老眼鏡

日本の部屋を訪ねる vol.05 郊外・二世帯

四つ点ける親、二つで足りる子 ひとつ屋根の二世帯

同じ家です。玄関がひとつ、廊下がひとつ、その先で左右に分かれて、間取りも広さも同じ居間がふたつ並んでいます。設計の打ち合わせでいちばん長くもめたのは、部屋の広さでも収納でもなく、明るさだったそうです。九月の夕方、親と子が住む二世帯の家を訪ねました。

郊外の二世帯住宅の親世帯の居間。天井に白いバーと白い円筒のスポットが四灯並び、四つとも点いている。うす茶のカーディガンの父が新聞を広げる斜め後ろ姿、低いテーブルに急須と菓子器と老眼鏡

親は四つとも点ける

天井の真ん中に、白いバーが一本。そこに小さな筒が四つ並んでいます。四つとも同じ向きではなく、少しずつ首を振って、部屋の四隅に光を配っていました。 「暗いと、落ち着かないんです」。はっきりそう言われました。夕方でも点ける。昼でも曇っていれば点ける。四つのうち一つを消すという発想はないそうです。「歳をとると、手元が見えないので」 打ち合わせでこの話が出たのは、間取りが決まったあとでした。「子どものほうが、うちは暗くていいと言い出して。じゃあ別々にしましょうという話になった」。同じ家で、同じ広さの部屋で、天井の器具だけを世帯ごとに分けて選んだことになります。

この照明 ▸ LED4灯シーリングライト リモコン式 調光調色 35W

同じ家の階段をはさんだ子世帯の居間。天井の銀色のアームに濃い茶色の傘が四つ、そのうち二つだけが点く。長い髪を下ろした娘がソファに寝そべって本を開く横顔、テーブルにマグカップ二つとナッツの器

子は引き紐を一度だけ引く

階段を挟んだ向こう側は、間取りも広さも同じです。天井の高さも同じ。天井の器具も、傘の数まで同じ。ただし形が違います。銀色の細いアームが十字に伸びて、その先に黒い傘が四つ。中央から細い引き紐が下がっています。 点いているのは、そのうち二つだけでした。「引き紐を引くと、二つ、四つ、消える、の順に変わるんです」。夜はほとんど二つで過ごす。「四つ点けると、写真みたいに明るくなってしまって」 光はソファのあたりに集まって、部屋の反対側は薄暗いまま残っています。親世帯の居間から移ってくると、最初は暗いと感じます。しばらく座っていると、目が慣れて、それで足りることが分かる。「同じ電球を使っているんですよ。数だけの違いです」

この照明 ▸ LED4灯シーリングライト E26 調光調色 スチール、天然木

同じ家の玄関。正面の壁に黒いS字の腕と平たい円錐の傘のブラケットが一灯、光が壁を上下に伸びる。三和土に革靴と子どもの運動靴、壁のフックにコートとマフラー、奥の引き戸から廊下の灯り

決まらなかった玄関

玄関はひとつです。ここだけは、どちらの好みにも寄せられない。 最初は天井に一台付ける案でした。「親は明るいのがいいと言うし、こっちは玄関くらい暗くていいと言うし」。決まらないまま図面が進んで、最後に出てきたのが、天井をやめて壁に一つという案だったそうです。 付いているのは、黒いS字の腕の先に、平たい円錐の傘。傘が平たいので、光は下に落ちるだけでなく、壁を上下に広がって伸びていきます。壁が明るいので玄関全体は暗く見えないのに、床に落ちる光は靴のあたりだけ。「明るいと言えば明るいし、暗いと言えば暗い。それで両方が黙りました」 住んでみて変えればよかったところを聞くと、この玄関ではなく、スイッチの話が返ってきました。「親のほうのスイッチが、部屋に入って三歩の場所にあるんです。暗いのが嫌な人の家で、三歩は遠かった」

この照明 ▸ LEDブラケットライト E26 電球色 850lm 2

この光のつくり方

明るさは人で決まる
同じ広さのリビングでも、要る明るさは住む人で変わる。畳数の目安より先に、その部屋で誰が何をするかを決める。
点ける数で変える
全部を点けるか半分にするかで、同じ器具が別の部屋になる。光の色を変えなくても、数だけで足りることがある。
共用の場所
好みが分かれる場所は、天井から壁に移すと折り合いがつくことがある。壁を照らす器具は、部屋を暗く見せずに床は暗いままにできる。
スイッチの位置
明るさを決めたら、点ける場所も一緒に決める。入って三歩の場所は、暗いのが苦手な人には遠い。

天井の受け口(引掛シーリング)に差す器具は工事がいりません。差して回すだけです。世帯ごとに天井の器具を変える場合も、受け口さえあれば器具は住んでから選べます。壁付けのブラケットを新しく付ける場合、スイッチの位置を変える場合、新しく配線を出す場合は、いずれも電気工事士の資格が要ります。工務店か内装業者、または電気工事店にお願いしてください。二世帯では、どこまでを共用にしてどこから世帯ごとにするかで、必要なスイッチの数と場所が変わります。親と子で相談して、壁を張ってしまう前に決めておくと手戻りがありません。

この部屋の照明

LED4灯シーリングライト E26 調光調色 スチール、天然木

NN-CEI-12

LED4灯シーリングライト E26 調光調色 スチール、天然木

全光束 【6W】600lm/クリア電球【6W】810lm/【9W】850l…/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/寸法 幅527mm×奥行527mm×高さ320mm/質量 約1.68kg/口金 E26

ブラウン本体のみ(電球付属無し)40W形調光調色セット60W形調光調色クリア電球

価格 準備中

LEDブラケットライト E26 電球色 850lm 2

NN-BRA-05

LEDブラケットライト E26 電球色 850lm 2

全光束 850lm/色温度 電球色2700K/寸法 S型・斜めアーム:奥行き39cm×高さ21cm、シェード直径23c…/質量 640g/口金 E26

S型・斜めアームS型・水平アーム器具のみA60・60W形LED電球2個付き

価格 準備中

編集後記

帰ってから、自分の部屋の灯りを二つ消して過ごしてみました。三十分は暗いと思い、そのあとは気にならなくなり、本を閉じるときになって初めて、目が疲れていることに気づきました。慣れることと、足りていることは、別なのかもしれません。次は、狭い土地に建てた三階の家を訪ねる予定です。

文・写真=照明堂 編集部

発行=日本ネオン株式会社 2026年09月10日 掲載

この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。

ほかの部屋

築五十年の木造を買って直した家の食卓。天井を一部だけ抜いて出した黒い梁から、金属のソケットの裸電球が三灯、長さを変えて下がる。藍色の上着の妻が湯呑みを包んで湯気を見ている、藍染めのランナーに急須

日本の部屋を訪ねる vol.03 東京・築五十年

梁から三つ下げた 天井の低い家の灯り

駅から歩いて十五分、細い道の奥にある築五十年の木造二階建て。買ったときは天井が低く、部屋が細かく仕切られていたそうです。壁を何枚か抜いて、居間と食卓をつなげた。天井も一部だけ抜いて、黒く古びた梁を出しました。灯りの話は、その梁が見えたところから始まったと言います。

郊外に建てた平屋の勾配天井の下の食卓。濃い緑のガラスの波形の傘のペンダントが二灯、同じ高さに並ぶ。えんじ色のセーターの妻がマグカップを持って窓の外を見ている横顔、葡萄の器と開いた雑誌

日本の部屋を訪ねる vol.04 郊外・平屋

まっすぐには下ろせなかった 屋根なりの天井の平屋

屋根の形が、そのまま天井になっている家です。二階がないぶん、勾配の低いところと高いところが、ひとつの部屋の中に同居している。打ち合わせで最初に言われたのは、この天井にはそのままでは吊り下げが付きませんという一言だったそうです。九月の夕方、郊外に建てた平屋を訪ねました。

都心の狭い土地に建てた築三年の三階建ての吹き抜け。二階の廊下の高さに、金属のソケットの裸電球が長い布巻きコードで下がる。灰青色のワンピースの妻が手すりから身を乗り出して一階をのぞき込む

日本の部屋を訪ねる vol.06 都心・狭小の三階建て

手の届く高さまで下ろした 狭い土地の三階建て

土地の幅が四メートルないそうです。横に広げられないぶん、上に伸ばした三階建て。一階から三階までを細い吹き抜けが貫いていて、その脇を階段が上がっていきます。廊下と呼べる場所は、この家にはありません。階段がそのまま廊下でした。九月の夜、都心の狭い土地に建った家を訪ねました。

築二十年の中古マンションの八階の食卓。天井のただひとつの受け口から、白い針金の籠の傘のペンダントが一灯下がり、影が天井いっぱいに広がる。画面の端に肩から上だけ写るニット姿の夫、急須と無花果の器

日本の部屋を訪ねる vol.02 東京・マンション

受け口はひとつだけだった 作り直した八階の部屋

築二十年の中古マンションを買って、中を全部作り直した部屋です。八階の南向き。図面を引いてもらう前に言われたのは、この天井にはダウンライトが入りませんという一言でした。そこから先の決め方が、前の号の注文住宅とはまるで違っていました。九月の夕方に訪ねました。