
日本の部屋を訪ねる vol.08 東京・中古マンションを直した家
灯りの位置を決め直した 東京の中古マンション
築三十年を超えたマンションの六階です。買ってから、二部屋の間の壁を取って一部屋にするところまで、中をリノベーションしました。壁は動かせても、天井の灯りの受け口には、動かせるところと動かせないところがあったそうです。どこを通して、どこで諦めたのか。九月の夜、三十代のふたりに聞きました。食堂、居間、廊下の順に見ていきます。

受け口を食卓の上まで動かした
居間と食堂は、もとは二つの部屋でした。天井には器具が一台だけ。細い横棒に、木の帯を二段に巻いた茶色の傘が四つ並んでいます。その真下に無垢の木の食卓。土鍋の蓋が開いていて、湯気が傘のほうへ上がっていました。取り皿が二枚、湯呑みが二つ、細いガラスの瓶にすすきが一本。 灯りの話は、壁を壊した日に向こうから来たそうです。「工事の方に、この受け口どこへ動かしますかって聞かれて。灯りのことを考えたのは、そのときが初めてでした。直したなかでいちばん手間がかかったのも、ここを食卓の上まで持ってくるところです」。もとの位置のままなら、器具は食卓から外れて、壁のあった線の近くに来ていたはずです。間取りを変えた家では、天井の受け口だけが前の部屋割りを覚えているのだと思います。彼女は取り分けを終えても、まだ座っていませんでした。

壁のあった線にレールを一本
食卓から続く居間の側です。天井に細いレールが一本渡してあって、黒い円錐の傘のスポットが二つ。一つは壁いっぱいの本棚へ、もう一つはソファの上の淡い青の絵へ向いています。ソファには畳んだブランケットと伏せた本。テーブルに湯気の立つマグカップが二つと、木の皿に梨。夫は本棚の前で、抜いた一冊をそのまま立って読んでいました。 レールは、取り払った壁が立っていた線をなぞるように付いています。端は、もとからあった天井の受け口につないである。「受け口を動かすのは工事の方に頼んで、器具とレールと電球は、自分たちで選んで買いました。ここは動かさずに、レールをつないだだけです」。受け口を動かさない代わりに、光のほうを見たいものへ向けて持っていく。本を読む人と絵を眺める人が同じ部屋にいるなら、そのほうが話が早いのかもしれません。窓の外は向かいのマンションで、外廊下の灯りが縦に並んでいました。

廊下の電球だけは壁に寄せて吊っている
玄関から居間へ、まっすぐな廊下が延びています。途中を白い梁が一本横切っていて、そこだけ天井が低い。その手前に、傘のない細長い電球が一つ、布巻きのコードで下がっています。天井の受け口から伸ばしたコードを、左の壁のほうへ寄せて吊ってある。土間には革の靴と白いスニーカーが一足ずつ。フックに紺のトートバッグと生成のストール、突き当りの引き戸のすりガラスに、居間の灯りが透けていました。 直したなかで、ここだけは諦めた場所だそうです。「廊下も、あのとき言えばよかった。梁のそばだから難しいと言われて、そのままにしたんです。コードで壁に寄せたけど、通るたびに思います」。そう言いながら、嫌いな場所ではないようでした。帰ってきて最初に目に入るのがこの電球で、ガラスの中にフィラメントが縦に光っている。梁の影が天井に落ちて、廊下が少し長く見えます。直しきらなかったところにも、住んでいる人の手はちゃんと入っていました。
この光のつくり方
- 受け口
- 間取りを変えるなら、壁を壊す前に天井の受け口の行き先を決めておく。器具を選ぶのは、そのあとで間に合います。
- 光の向き
- 受け口を動かせない場所は、レールを一本渡して、光を見たいものへ向ける。本棚と絵なら、二灯で足ります。
- 電球
- 傘を付けずに吊るなら、細長いフィラメントの電球がいい。形がそのまま廊下の飾りになります。
- 数
- 食卓に四灯、居間に二灯、廊下に一灯。足りない夜は、窓辺の小さなランプで埋めます。
シーリングライトも、コードで吊る電球も、天井に引掛シーリングがあれば差すだけで付きます。ダクトレールも、引掛シーリングに付けるタイプなら工事はいりません。ダイニングの灯りを食卓の上へ寄せるような受け口の位置変更や、受け口を増やすときは、電気工事の店に頼んでください。
この部屋の照明
NN-CEI-14
LED4灯シーリングライト E26 調光調色 幅700×高さ315mm
全光束 【6W】600lm/クリア電球【8W】810lm/【9W】850l…/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/寸法 幅700mm × 高さ315mm/質量 (約)1.5kg/口金 E26
価格 準備中
編集後記
この号を作ったあと、自分の部屋の天井を見上げて受け口を数えました。三つあって、二つは前に住んでいた人の家具の位置のままです。動かす工事はしていません。代わりに、その下の机のほうを一つずらしました。次はアムステルダムです。間口が狭くて奥に深い、運河沿いの家を訪ねます。 H.
文・写真=照明堂 編集部
発行=日本ネオン株式会社 2026年09月22日 掲載
この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。



