ベルリンの古いアパートの居間。天井の丸い漆喰の飾りの中央に、金色の4灯シーリングライト。灰色のソファに腰かけた白髪の男性が白いティーポットから茶を注ぎ、木のテーブルに蜜柑を盛ったガラスの器。背の高い二重の木の窓の外は、向かいの建物の窓明かりと暮れた青い空

海外の部屋を訪ねる vol.07 ベルリン

光の行き先を決める ベルリンの古いアパート

ベルリンでは、百年以上前に建った集合住宅がいまも普通に使われています。天井までが3.5mあって、縁には漆喰の細い飾りが回っている。日本の家とは寸法も作りもまるで違うのですが、三つの部屋を見ていて一つだけはっきりしたことがありました。どの部屋も、部屋全体を明るくしようとしていない。灯りを足すのではなく、光の行き先を決めています。居間、仕事部屋、廊下の順に見ていきます。

ベルリンの古いアパートの居間。天井の丸い漆喰の飾りの中央に、金色のアームに4つの透明な電球が付いたシーリングライト。灰色のソファに腰かけた白髪の男性が白いティーポットから茶を注ぎ、木の低いテーブルに蜜柑を盛ったガラスの器と伏せた本。白いタイルの暖炉、窓辺のフィカスとキャンドル、背の高い二重の木の窓

天井の飾りの真ん中に

天井の中央に、丸い漆喰のレリーフがあります。器具はその真ん中に付いています。古い家に新しい灯りを足すとき、飾りの中心を外して付けると、そこだけあとから足したように見える。中心に合わせるだけで、もとからあったように収まります。日本のマンションでも、天井の引掛シーリングは部屋の中心にあることが多いので、同じ考え方が使えます。 この器具のソケットは四つありますが、向きがそろっていません。外側の二つは左右の白い壁へ、内側の二つは斜め下のソファとテーブルへ向いています。天井が3.5mある部屋で、一台から真下だけを照らすと、光は届くまでに弱まって、手元も壁も中途半端になります。同じ一台でも向きを分けてやると、壁が明るくなって、部屋は実際より広く見えます。 彼は夕方の茶を淹れているところです。窓の外は中庭をはさんだ向かいの建物で、同じ高さの窓にもう灯りが点いています。

この照明 ▸ LED4灯シーリングライト E26 調光調色

ベルリンの古いアパートの食堂兼仕事場。天井の黒いダクトレールに黒い円筒のスポットライトを三灯。奥の白い壁に立てかけた描きかけの絵を右の一灯が照らし、えんじ色のセーターの女性がマグカップを持って眺めている。長い木のテーブルに林檎の鉢と開いたスケッチブック、棚に画集と陶器の壺

部屋ではなく、見たいものに当てる

食事もして仕事もする細長い部屋です。天井に黒い細いレールを一本渡して、スポットを三つ。レールの器具は、あとから位置も向きも変えられます。この部屋のように使い方が一つに決まっていない場所には向いています。 奥の壁には、この家の人が描いている途中の絵が立てかけてあります。鉛筆の下描きの線がまだ残っていて、絵の具が置かれているのは三分の一ほど。三つのスポットのうち、その絵に向いているのは奥の一つだけです。あとの二つはテーブルの側を向いています。壁に当たった光は天井と壁づたいに回るので、一つを絵に取られても部屋の明るさは足りています。見せたいものがある部屋では、灯りの数より、どれをどこへ向けるかのほうが効きます。 器具は片手で握れるくらいの大きさです。天井が高いので写真ではさらに小さく見えますが、手のひらに載ります。数を足しても天井がうるさくならないのは、一つずつが小さいからです。

この照明 ▸ LEDライティングレール用スポットライトE26

ベルリンの古いアパートの廊下。天井から黒い布巻きコードで透明なフィラメント電球を一つ、傘を付けずに下げている。右の壁の木のフックに紺のコートと辛子色のマフラーと灰色のニット帽、木のベンチに籐の籠と革の手袋、床に革のブーツ。左の壁に木枠の丸い鏡と陶器の小鉢を並べた細い棚。突き当りの白い戸が半分開いて、向こうの部屋から暖かい灯りが漏れている

暗いままにしておく場所

玄関から続く廊下に、電球が一つだけ下がっています。傘のない裸電球です。黒い布巻きのコードと小さなソケットだけなので、天井には何も足していないように見えます。 この廊下は、明るくできるのにしていないのだと思います。コートを掛けて、ブーツを脱いで、鏡で一度自分を見る。その動作に要る明るさは、たかが知れています。それ以上を足すと、今度は突き当りの戸から漏れている光のほうが目立たなくなる。廊下を暗いままにしておくから、奥の部屋が暖かく見えます。 家の中で「ここは暗くてよい」と決められる場所を一つ作れるかどうかは、けっこう大きいと思います。全部の部屋を同じ明るさにそろえると、どの部屋にいても同じ顔になります。

この照明 ▸ LEDフィラメント電球 E26 電球色500lm

この光のつくり方

天井が高い部屋
一台を大きくするより、光を何方向かに分ける。多灯の器具なら、ソケットの向きをそろえず、いくつかを壁へ向けると部屋が広く見えます。
古い家の天井
漆喰の飾りやレリーフがあるなら、その中心に合わせて付ける。中心を外すと、あとから付け足したように見えます。
壁に見せたいものがあるとき
部屋を均一に明るくしようとせず、一灯をそれに向ける。ダクトレールなら、あとから位置も向きも変えられます。
暗くてよい場所
廊下や通り道は明るくしない。そこを控えめにするほど、奥の部屋の灯りが暖かく見えます。

コード吊りのソケットも、シーリングライトも、天井に引掛シーリングがあれば差すだけで付きます。ダクトレールは、引掛シーリングに挿して使うタイプなら同じく工事はいりません。天井に直接ねじで留めるタイプのレールと、いま配線の来ていない場所に新しく灯りを付ける場合は、電気工事の店に頼んでください。

この部屋の照明

LED4灯シーリングライト E26 調光調色

NN-CEI-11

LED4灯シーリングライト E26 調光調色

全光束 【6W】600lm/クリア電球【6W】810lm/【9W】850l…/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/寸法 幅700mm × 高さ220mm/質量 約1.2kg/口金 E26

ブラックホワイトゴールドシルバー

価格 準備中

編集後記

三つの部屋のどれも、天井の一台で全部を明るくしてはいませんでした。器具の数は決して少なくないのに、どこにも「部屋じゅうが明るい」場所が無い。うちのカタログでは多灯の器具を「広い部屋に」と書いてきましたが、この号を作って、書き方を変えたほうがよいと思いました。灯りの数の値打ちは、明るさの合計ではなく、光を何方向かに分けられることのほうにあります。数の多い器具ほど、向きを変えられるかどうかを見て選ぶべきでした。次はアムステルダムです。運河沿いの、カーテンを引かない家の話になります。

文・写真=照明堂 編集部

発行=日本ネオン株式会社 2026年09月17日 掲載

この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。

ほかの部屋

パリのアパルトマンの居間の天井に、金色のアームが放射状に伸びた6灯のシーリングライト。緑のベルベットのソファで手紙を読む後ろ姿、大理石のマントルピースに一輪のダリア、窓の外は夕暮れの空とバルコニーの鉄柵

海外の部屋を訪ねる vol.01 パリ

夜が始まるまでの二時間 パリのアパルトマン

パリの夕食は八時ごろから始まる、とよく言われます。では日が暮れてから食卓に着くまでの二時間、家の人はどこにいるのか。居間、台所、屋根裏と順に見ていくと、灯りのつき方でだいたい見当がつきます。

ブルックリンのロフトのレンガの天井に、黒い6灯のシーリングライト。革のソファでノートを開く横顔、木箱に並んだレコード、鉄枠の大きな窓

海外の部屋を訪ねる vol.03 ブルックリン

工場だった建物に住む ブルックリンのロフト

ブルックリンには、工場や倉庫だった建物をそのまま住まいにしている部屋がたくさんあります。天井が高く、窓が大きく、壁はレンガのまま。日本の家とはいちばん条件の違う部屋ですが、灯りの置き方だけは持ち帰ることができます。

コペンハーゲンのアパートの白い天井に、金色の腕が左右に伸びた6灯のシーリングライト。灰色のソファで毛布をかけて本を読む後ろ姿、窓辺のモンステラ、木の低い棚

海外の部屋を訪ねる vol.02 コペンハーゲン

四時にはもう暗い コペンハーゲンのアパート

北欧の冬は、日の出ている時間が短くなります。コペンハーゲンでは十二月なら、午後四時を過ぎるともう暗い。一日のうち灯りをつけている時間のほうが長い街で、人は部屋の灯りをどこに置いているのか。居間、台所、玄関の順に見ていきます。

ロンドンのテラスハウスの深い緑の壁に、金色のアームと透明ガラスの丸い傘のウォールライト。革のひとり掛けの椅子で本を読む横顔、木の小さなテーブルにウイスキーのグラス

海外の部屋を訪ねる vol.04 ロンドン

壁の色が濃い家 ロンドンのテラスハウス

ロンドンの家は、壁の色が濃いことがあります。深い緑や紺に塗った部屋は写真で見ると素敵ですが、光をよく吸います。同じ器具をつけても、白い壁の部屋ほどには明るくなりません。それでもこの街の人が濃い色をやめないのは、暗さと引き換えに手に入るものがあるからだと思います。居間、台所、書斎と見ていきます。