
海外の部屋を訪ねる vol.08 アムステルダム
窓を隠さずに夜を過ごす アムステルダムの運河の家
九月の終わり、オランダのアムステルダムで日が沈むのは七時半ごろです。運河沿いには、間口が狭くて奥に深いレンガの家が肩を寄せて並んでいて、夜になると、その窓の一つずつに灯りが入ります。この街の家はカーテンを引かないことが多いので、通りを歩くと、よその家の居間がそのまま見える。灯りが、住んでいる人のためだけのものではない街です。三十代のふたりが暮らす家を、二階の表の部屋、一階の奥の台所、階段の順に見ていきます。

外から見える机の灯り
運河に面した二階の部屋です。背の高い窓が二つ並んでいて、カーテンはありません。窓の前に机を置いて、その右の端に布の傘の卓上ランプが一台。天井の灯りは点いていなくて、部屋の奥の角でフロアランプがもう一つ灯っているだけです。窓の向こう岸の家も同じように、カーテンの無い窓の中に灯りがいくつか見えています。 この家の人にとって、窓辺のランプは手元を照らすためというより、外に向けて置いてあるのだと思います。カーテンを引かないのは見られてもかまわない暮らしをしているからだ、とこの街ではよく言われます。そうなると、外から見える場所に何を灯しておくかは、部屋の中の話だけではなくなる。傘のある灯りを一つ窓に向けておくと、通りから見たときに、家の中が暖かいことだけが伝わります。彼女は膝にノートを閉じたまま、しばらく運河のほうを見ていました。

台所の灯りを奥へ向かって並べた
一階の奥が台所です。間口は4mほどしかなく、そのぶん奥へ長い。右の壁に沿って、流しとコンロとオーブンが一続きのキャビネットに収まっています。天井には奥へまっすぐ一本、黒い細いレールが通っていて、そこに筒形のスポットが三つ、一列に並んでいます。三つとも同じ方を向いてはいません。真ん中は調理台に、いちばん奥は突き当りの棚の器に、手前の一つは食卓のある手前側に首を振ってあります。 細長い部屋の真ん中に灯りを一つだけ付けると、手前も奥も同じように薄く明るくなって、部屋の長さが見えなくなります。灯りを奥に向かって並べると、光の溜まる場所が前から後ろへ点々と続いて、奥行きがそのまま部屋の表情になる。この家の人も、そこまで考えて並べたのかどうかは分かりません。ただ、食卓に座ったまま、コンロの前に立つ人と、その向こうの棚までが一度に見えます。彼はこの夜、食卓のパンが冷めないうちにと、鍋の火を少し強めていました。

電球が上の階から降りてくる
運河沿いの家の階段は急です。ここも幅は広くなく、三階まで一気に上がっていきます。大きな家具はここを通らないので、屋根の下に付いたフックで窓から吊り上げて入れるのだそうです。その吹き抜けに、傘の無い電球が三つ、高さをずらして下がっています。いちばん上は三階の踊り場、真ん中は二階、いちばん下は一階の上り口の上です。 縦に長い家なので、灯りも縦に並ぶのだと思います。天井に一つ付けて上から照らしても、この急な段の下のほうまでは届きません。一つの階に一つずつ下げておけば、どこに立っていても、足もとと、その上の段が同時に見えます。電球はフィラメントの形が見えるもので、光は電球色です。夜の十時を過ぎると、この家ではいちばん下の一つを消して、上の二つだけで寝室へ上がっていくそうです。
この光のつくり方
- 窓辺
- カーテンを引かない夜があるなら、窓の近くに傘のある灯りを一つ。外から見た自分の家の窓も、部屋の一部として考えます。
- 細長い部屋
- 真ん中に一つではなく、奥へ向かって灯りを並べる。光の溜まる場所が点々と続くと、部屋の奥行きが見えてきます。
- 階段
- 上から一つで照らそうとせず、階ごとに一つずつ。どこに立っても、足もとと次の段が同時に見えます。
- 光の色
- 三つの部屋とも電球色でした。窓の外の水面や向かいの家の窓明かりと、同じ色になります。
卓上ランプはコンセントに差すだけで使えます。電球は口金がE26のソケットならねじ込むだけです。スポットを付けるレールは、天井の引掛シーリングに付けるタイプなら工事はいりませんが、天井に直接ねじで留めるレールや、配線の来ていない場所に新しく灯りを下げる場合は、電気工事の店に頼んでください。
この部屋の照明
NN-DES-03
LEDデスクライト 調光調色
全光束 【6W】600lm/【9W】850lm/色温度 電球色2700K~昼光色6500K調色可能/電源 AC100V 50/60Hz/ビーム角 220°(超広角配光)
価格 準備中
NN-SPO-22
LED一体型スポットライト 電球色 10W 850lm
全光束 850lm/消費電力 10W/色温度 電球色3000K/寸法 約Φ55mm×全長H200mm (シェード部分:Φ55mm×H95…/材質 鉄、PC
価格 準備中
編集後記
この号を作ってから一週間、うちの居間のカーテンを夜も開けたままにしてみた。三階なので誰に見られるわけでもないのに、最初の二晩は落ち着かなかった。三日目に、窓辺の棚へ小さな灯りを一つ移したら、なぜか気にならなくなった。窓が黒い穴ではなくなると、開けておけるらしい。次はリスボンです。夕食が九時を過ぎてから始まる街で、灯りを点けるのがいちばん遅い家になります。 H.
文・写真=照明堂 編集部
発行=日本ネオン株式会社 2026年09月23日 掲載
この連載の家と人物は、照明の使い方を伝えるために構成したものです。掲載写真はイメージです。



